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『ダニエル・ヤーギン著『新しい世界の資源地図』を読み解く|2050年の日本エネルギー戦略と地政学的課題』
ダニエル・ヤーギン著『新しい世界の資源地図』から考える、2050年日本のエネルギー・資源戦略-2(2022年5月10日投稿記事)
習近平・中国の野望、多様な背景にある中東のエネルギー戦略事情
今回はシリーズ2回目、<第3部 中国の地図>と<第4部 中東の地図>を取り上げます。
<第3部 中国の地図>から
第3部 中国の地図
1.G2
2.「危険海域」
3.南シナ海をめぐる3つの問い
4.「次の世代の知恵に解決を託す」
5.歴史の役割
6.南シナ海に眠る資源?
7.中国の新たな宝の船
8.米中問題 ー 賢明さが試される
9.一帯一路
ヤーギンがまず描く中国の地図は、2つの国で世界のGDPの約40%、軍事費の約50%を占める、非公式のグループ構成概念、G2。
もちろんそれは、米国と中国のグローバル社会における存在とその関係・影響力の大きさを示す象徴としてのものです。
当時のビル・クリントン大統領が外交の最大成果と呼んだ、2001年に認められた中国のWTO(世界貿易機関)加盟がもたらした、その後の世界経済における同国の急速な成長・膨張。
それは、一方で、貿易戦争、経済や安全保障問題をめぐる対立、米中経済のデカップリング論、軍拡競争、経済モデル、そして21世紀の盟主の座をめぐる争いと、連綿とつながる問題を提起していることをヤーギンは示します。
そして新型コロナウィルスの拡大における分断も巻き込み、米ソ時代とは異なる種類の冷戦を引き起こしているとも言います。
加えて、欧米のウクライナ支援の拡大が招いたプーチン・ロシアの混迷が、今後の中国の地政学的・経済的・軍事的存在感の拡大を招くと予想されることで、G2米中の軋轢が、当然一層高まると予想されます。
こうした中国の野望と行動の裏付けとして、南シナ海をめぐる歴史上・地政学上の中国の思想が縷縷語られています。
歴史をもって語る場合、すべて自国に都合よいように解釈し、主張するのが常套です。
中国は、古来からの自国の領土・領海とそれに伴い保有する権利という主張を常套とし、台湾の併合に加え、未だ見ぬ海深資源の利権確保も当然の権利とするのです。
そしてその思いは、G2としてのプレゼンスと経済力・国家資本、人口そして軍事力を背景にして、「一帯一路」の野望に連なっていることは既に、賛否拮抗しつつグローバル社会の認識するところとなっています。
ここでは省略せざるをえませんが、ヤーギンが描く中国の地図において、中国が主張し、提案し、働きかける多様多面かつ多数の国・地域との関係とその内容・手法等に関し、微に入り細に入り例示・説明・紹介しています。
そして、こう結んでいます。
多くの国は中国からの投資を欲し、新しいグローバル経済に加わりたいと考えている(略)
一方、米国は、トランプ以降、(バイデンのアフガンからの撤退もあるように)世界の問題から手を引きつつあると、多くの国に見られている。(略)
これが中国との関係を深めることの理由になっている。
ロシアやインドも自国の思惑を抱えているし、他の新興国も同様だろうが、そして「債務の罠」の問題も指摘されるケースが増えているようには思えるが、
それでも多くの国にとっては、当面、一番いい取引を持ちかけてくるのは中国であるということになるだろう。
インフラ資金やエネルギー投資がやってくる方を向き、グローバル経済の新しい地図の中で自国の場所を確保したいと考える国々は、台頭する中国、積極的に関与する中国の側に付くほうが、ますます一貫性を失い手を引きつつあるように見える米国側に付くより、得策だと判断するだろう。
ウクライナ侵攻で、恐らくプーチン・ロシアが描く地図は、色褪せることになるのでは、と想像します。
となると一層、中国の存在が際立つことになる可能性が高く、米国が今後、先述した習近平が未来に描く地図にどのようなスタンスで臨むのかが問われることになります。
当然、ウクライナ支援では米国と一体的な行動をとったEU欧州各国ですが、果たして相手が中国となったとき、対ロシアと同様の対し方ができるか否か。
これはまったく異質なものとなる可能性も高いと現状では思わざるをえません。
新興国の態度と同じということはありえないとしても、です。
それよりも、バイデン後の米国が、その支持の脆弱性やトランプの復活野望の実現の可能性をも考えると、G2の一方の盟主としての存在自体が、予測不能の不安定さ、信頼感の低下・欠如により危うくなることも想定可能ではないか・・・。
すべての想定外をも想定内として、日本が日本のどんな地図を描いていくのか。
新型コロナパンデミックとプーチンロシアのウクライナ侵攻は、日本に直接的にその必要性を語りかけていることをしっかり認識し、次の必要な行動に結びつける必要があると考えます。
<4部 中東の地図>から
第4部 中東の地図
1.砂上の線
2.イラン革命
3.湾岸戦争
4.地域内の冷戦
5.イラクをめぐる戦い
6.対決の弧
7.「東地中海」の台頭
8.「答えはイスラムにある」 ーISISの誕生
9.オイルショック
10.改革への道 ー 悩めるサウジアラビア
11.新型ウィルスの出現
中東と一括りで言っても、そこでのエネルギーを巡るグローバル社会との関係やそこに位置する産油各国の考え・戦略は多様です。
宗教・人種・民族や王政等と関わる国家体制・国家観の違いに思想的違いが重なり合い、そこにこれまでの歴史が多重に、複雑に絡んでいる。
そしてもちろん、今継続している、ロシアのウクライナ侵攻が引き起こしたグローバル社会のエネルギーを巡る変化も、中東全体と各国の現状そして今後に少なからず影響を及ぼします。
そうした前提としての諸事情と今後のあり方についてヤーギンは考察を加えます。
その基本認識は、<序論>にこう示しています。
今日の中東が抱える最大の問題は、スンニ派のサウジアラビアとシーア派のイランの覇権争いに由来する。
そこへ近年、トルコがオスマン帝国に遡る正当性を持ちだして、新たに中東の盟主として名乗りを上げたことから、状況はさらに混迷を深めている。
しかし中東情勢の背景には、40年に及ぶ米国とイランの対立や、多くの国で常態になっている統治の弱さもある。
そして、国境線以外の重要な地図として、地質の地図、油田と天然ガス田の地図、パイプラインとタンカーの航路の地図の問題を指摘。
当然ながら油田と天然ガスがもたらす富と権力をめぐる問題が頻発、継続する中、2014年の石油価格の急落以降、石油の将来に関する議論に変化が起き、「ピークオイル」石油の産出がいつ底を突くかへの不安、そして今は、「石油需要のピーク」その消費がいつまで増え続け、いつ減少に転じるかへの関心へと移っている、と指摘します。
基本をなす地図。
それは、
イラク、シリア、レバノン、サウジアラビア、クウェート、イラン、UAEアラブ首長国連邦、トルコ、オマーン、リビア、イエメン、エジプト、イスラエル、ナイジェリア、そしてISISなど、多種多様多数のプレーヤーが、エネルギーと地政学をめぐり都度登場・関与してきた、そして今も進行している歴史物語として、この第4部できめ細かく描写されているものです。
非常に読み応えのあるものですので、機会があればどうぞ手にとってみて頂きたいと思います。例えば、乱暴なピックアップですが、
1979年の当時のソ連のアフガニスタンへの侵攻。
これに対する米国の介入・反撃がソ連の崩壊につながったこと。
イラン・イラク戦争、湾岸戦争、イラク戦争、アラブの春からアラブの冬へ、
2014年から2015年にまたいで起きたオイルショック。
その後の、OPEC非加盟国の一つとしてのロシアの立ち回り。
そして、新型コロナウィルス感染拡大によるグローバル経済の停滞と石油価格の下落。
こうした折々の時期・時代の変化にOPEC加盟の中東及び中米産油国と米ロ等非加盟産油国、それぞれのプレーヤーが、自国の利益と優位性確保のために、地図の書き換え等の行動に取り組む描写も、歴史家としてのヤーギンの面目躍如たるを示しています。
とりわけ、新型コロナパンデミックの影響を受けての2020年の石油需要の激減から、石油輸出国が経済の多様性と近代化の必要性・危機感を認識しており、アラブ首長国連邦の「ビジョン2030」やサウジアラビアの長期的な再生可能エネルギー政策を含む最近の動向がその例とされています。
しかし、繰り返しになりますが、こうした史実と現状認識に加え、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー問題要素が中東産油各国に、また新たな課題・影響を与えつつあります。
ここに米国は、ロシアは、そして中国は、今後中東にどのように関わっていくのか。
日々刻々と伝えられる情報に注視しつつ、長期的な視点をも持ち、日本の在り方を検討・考察し、選択肢を描き、適切に行動していくことになります。
先述した石油資源の需要の低下・激減不安や資源枯渇への懸念・関心は、気候政策とテクノジーが結び付いたことが大きく関わっている。
ヤーギンのその認識から展開されるべき次の地図を描き直す課題。
次回、地政学視点を織り交ぜながら、グローバル社会そして各国に共通の課題としての第5部<自動車>の地図と、第6部<気候>の地図を取り上げます。

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