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『ダニエル・ヤーギン著『新しい世界の資源地図』を読み解く|2050年の日本エネルギー戦略と地政学的課題』
ダニエル・ヤーギン著『新しい世界の資源地図』から考える、2050年日本のエネルギー・資源戦略-1(2022年5月9日投稿記事)
米国の新しい地図と古い地図に戻そうとするプーチン・ロシア
今回第1回は、上記の全体構成の内の<第1部>と<第2部>を取り上げます。
<第1部 米国の新しい地図>から
第1部 米国の新しい地図
1.天然ガスを信じた男
2.シェールオイルの「発見」
3.製造業ルネサンス
4.天然ガスの新たな輸出国
5.閉鎖と開放 -メキシコとブラジル
6.パイプラインの戦い
7.シェール時代
8.地政学の再均衡
ロシアのウクライナ侵攻に対し、欧米によるウクライナへの拡大する強力な武器支援。
長期化する中、今日2022年5月9日にロシアで行われる対ドイツ戦勝記念日式典でのプーチン大統領の演説がどのようなものになるか注目を集めています。
ロシアのガスや石油への依存度が非常に高かったドイツをはじめとするEU各国が、その理念からロシア離れを決断した一方、その結果、利益を専有するのは米国のみ。
そう言われている最大の理由が、この<第1部>で描かれている、シェールオイル、シェールガスを発掘し、シェール時代を築きエネルギーの輸出国に、米国が変貌・台頭していることにあります。
本書で描いている時代の「諸地図」の中で、実は「新しい」と表現されているのが、この米国の地図だけです。
この「新しさ」は、米国がこれまで輸入国に甘んじてきた米国が、21世紀になってシェール革命によって、エネルギー輸出国に転じ、グローバル社会における復権の一要因となったことで付されたのです。
ヤーギンは、それを「突如起こったシェール革命」と表現しています。
この第1部では、シェールオイルとシェールガスによるシェール革命が起きるまでの国内での長きにわたる取り組みと、グローバル社会のゼロカーボン化とのせめぎあい・軋轢問題に、相当の文字数・頁数を費やしています。
その国内事情・背景を理解しておくことに意義がありますが、何よりも重要なのは、エネルギーをめぐる国家間関係における米国の評価と立ち位置の高まりです。
それは、先述したように、ロシアのウクライナ侵攻により、一層顕在化・強化されてきていることが明らかです。
ただ、本書の<序論>で早々述べているように、それ以前に
「米国はシェール革命の結果、石油と天然ガスのどちらにおいても、ロシアとサウジアラビアをいっきに抜いて、世界最大の生産国になり、現在では世界屈指の石油と天然ガスの輸出国」になっていたのです。
こうして得た地政学的な結果は、新たな影響力にも、強化されたエネルギー安全保障にも、選択の幅が広がった外交政策にも見て取れるが、その自信には制約があるヤーギンは言います。
それは、エネルギー政策は、国際関係の総体の中に組み込まれていること、新型コロナウィルスにより出現した減産・価格下落・関連企業の経営危機、そしてトランプ前大統領に代わって就任したバイデン大統領自身がカーボンゼロ政策を推し進める立場にあること、そして今時のロシア・ウクライナ問題への拡大する米国の関与など多因子と関係しているためです。
もちろん、それは、ロシアにとっても脅威であることは間違いない事実ですが。
もう一つ付け加えるなら、後述するロシアの中国との連携強化による「東方シフト」とは異なるニュアンスですが、シェールにより米国がアジアにおいてその「存在感」を高めることとなり、それは米中関係の新たな展開にも繋がっていることを再確認しておく必要があります。
それは当然、日米関係の強化と合わせて、日中関係、対北朝鮮関係の今後のあり方と繋がっていることはいうまでもありません。
相当の質量からなる<米国の新しい地図>を少々偏って概説しましたが、その最後にある一節を抜粋し、次の<ロシアの地図>の俯瞰に移動します。
シェール革命により世界の石油市場は一変し、エネルギー安全保障の概念が変わりつつある。これまで何十年にもわたって世界の石油市場を規定してきた「OPEC加盟国vs非加盟国」という捉え方は、「ビッグスリー」(米国、ロシア、サウジアラビア)という新しいパラダイムに取って代わられた。
新型コロナウィルスによって引き起こされた石油市場の危機に際し、モスクワ、リヤド、ワシントンの三者のあいだで前提のないやりとりが交わされたことは、図らずもそのことをありありと物語っていた。(略)
さらに、危機に対処しようとする各国の行動には、エネルギーが今後も引き続き地政学の中心になることが、あらためて示されていた。ウラジミール・プーチンもきっと、そう見ているはずだ。
まさに今継続している欧米が支援するウクライナとロシアとの戦い。
欧米諸国のロシア石油・ガス禁輸政策の拡大がもたらす、ロシアの動向。
そして、中国の今後の政策及び中東の動向と、各国の中東との関係の変化。
こうしたグローバル社会の今後を、プーチンはどこまで、どう予測し、考えているのか。
恐らく、とにかくウクライナの少しでも多くをロシア化することだけしか眼中にないのではと思われるのですが、次に、ヤーギンの客観的歴史観をベースにした<ロシアの地図>描写を見てみましょう。
<第2部 ロシアの地図>から
第2部 ロシアの地図
1.プーチンの大計画
2.天然ガスをめぐる危機
3.エネルギー安全保障をめぐる衝突
4.ウクライナと新たな制裁
5.経済的苦境と国家の役割
6.反発 ー第2のパイプライン
7.東方シフト
8.ハートランド ー中央アジアへの進出
第三次世界大戦への展開も懸念される2022年のロシアのウクライナ侵攻は、歴史上、グローバル社会における安全保障・防衛戦略政策上の大転換を生起させるものとなりました。
まさか、それがプーチン・ロシアによってもたらされることになったことは、実は、プーチン自身が対ウクライナ問題を、単にローカルな問題を見誤っていたという、笑い話では済まされない時代錯誤です。
よく人は、「歴史に学ぶべき」といいますが、こうした学び方の偏りや盲信は、やはり過去にも繰り返され、今も行われているのが現実です。
今回のウクライナ侵攻は、プーチンから見れば、2014年のクリミア併合の延長線上にあるものです。
しかし、欧米とりわけEU各国とNATO加盟国にとっては、クリミア併合によるロシア制裁がなんら機能せず、かえってロシアの思考・志向・思想をプーチンなりに合理化し、一層その行動を拡大させることになった反省と怒り、そして恐怖のがないまぜになり、経済制裁の拡大強化と強大な武器支援につながったと言えるでしょう。
<序論>で、ヤーギンは、この第3部について以下のように述べています。
エネルギーフローの相互作用や地政学的なせめぎあい、さらには30年前のソビエト連邦崩壊と、ロシアを再び大国にしたいというウラジミール・プーチンの宿願のせいで、なかなか決着しない国境問題から生じる火種について論じる。
ロシアは「エネルギー大国」だが、経済面で石油と天然ガスの輸出に大きく依存している。ソ連時代同様、現在も、それらの輸出がもたらしうる欧州への政治的な影響力については、激しい論争が巻き起こっている。ただし、欧州や世界の天然ガス市場で起こった変化によって、そのような潜在的な影響力は消し去られている。
ソ連が、15の独立国に分かれたことで生じた不安定な状況は、いまだ解消されていない。とりわけ先行きが不透明なのは、天然ガスをめぐって対立するロシアとウクライナの関係だ。2014年のロシアによるクリミア併合後、両国の争いの舞台はウクライナの南東部の洗浄に写った。
ここで簡単に述べられたクリミア併合と元来のロシアとウクライナの関係をめぐる記述が、<ロシアの地図>をなぞる上での中心をなしています。
第4章<ウクライナと新たな制裁>が、その史実をなぞったものとして分かりやすくレポートされており、非常に興味深く読むことができます。
また、第3章<エネルギー安全保障をめぐる衝突>及び第6章<反発 ー第2のパイプライン>が、ロシアの天然ガスに大きく依存してきたドイツを始めとするEU諸国の現状の苦境を理解する上で、重要な記述となっています。
ガスプロム及びガスプロム2などが描かれたそこでの内容は、別の機会に紹介できればということで省略させて頂きます。
そして今まさに、ヤーギンが危惧したそこにある危機が現実のものとして、2022年、ロシアがウクライナに侵攻。
宿願が簡単に実現するものと高を括っていたプーチンの驕りと盲信が、欧州等との関係で既に起こり、疑問が呈されることがなくなっていた変化と「影響力の潜在化」を、まさに寝た子を起こすかのように呼び覚まし、自由・民主主義欧米対強権専横主義中ロ、2つの体制の激しい分断化を招くことになったわけです。
中立的政策をとっていたフィンランド等北欧国家のNATO加盟化というロシアにとっては想定外の行動をも招きつつ。
エネルギー問題が、国家(間)の衝突(the Clash of Nations)を拡大化し、長期化させているのです。
上記の引用<序論>に続く記述に、以下があります。
米ロ関係は、1980年代初頭のソ連時代以来見られなかったほどにまで冷え込んだ。
同時に、ロシアは中東に「回帰」するとともに、中国に近づく「東方シフト」を進めている。結束した中ロ政府は「完全な主権」を主張し、米国の「覇権」に異を唱える。中ロのこの急接近には、実際的な思惑もある。中国はエネルギーを必要とし、ロシアは市場を必要としているからだ。
ここではロシアの「東方シフト」は、石油と天然ガスを得たい中国との関係強化と関連させて用いています。
しかし、私がこのロシアの「東方シフト」からイメージしたのは、北方領土問題を抱える日ロ関係の悪化、ロシア・中国・北朝鮮3国の強権・専横主義国家の結束による、日本の安全保障・防衛リスク対策の顕在化です。
特に、その地政学的リスクと重ね合わせて、化石燃料資源を持たない日本の短期・中長期エネルギー政策をどうするのか、一層その問題意識・危機意識を議論・共有し、まとめ上げ、具体的な取り組みを持続化すべきことはいうまでもありません。
次回は、そこに示された地政学上の残り2つ、第3部<中国>の地図と、第4部<中東>の地図を取り上げます。

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