ライフステージ

人生100年時代は4世代形成社会。それぞれの世代における年齢やキャリアに応じてのライフイベントとライフステージを自分流に創り上げ、実行実践する方法や考え方などを提案します。

増加する高齢者「身元保証」トラブル|行政が担うべき、高齢単身者の終活と死後対策

ほぼ1ヶ月前になるが、1月8日付日経に以下の2つの記事が掲載された。
⇒ 高齢者「身元保証」、トラブルが急増  単身向けに事務手続き代行 監督官庁なく信頼性課題 – 日本経済新聞
⇒ 公的サービス手探り  静岡市、事業者の認証制度 – 日本経済新聞

ページに広告が含まれることがあります。

国立社会保障・人口問題研究所が発表した2024年推計世帯数では、75歳以上の一人暮らしが占める割合は2025年の22.4%から50年には28.3%に高まる。
世帯主年齢が65歳以上の一般世帯総数は、2020年の2,097万世帯から2050年の2,404万世帯へと307万世帯増加。75歳以上世帯は、1,067万世帯から1,491万世帯へ425万世帯増加、85歳以上世帯は305万世帯から538万世帯へと233万世帯の増加が見通されており、特に85歳以上世帯は約1.8倍に。
これを家族類型別にみると、2020年と2050年値の比較で最も増加するのは「単独世帯」738万世帯が1,084万世帯へと1.47 倍に増える見通し。
この状況を背景とした、単身高齢者の生活と死後の対応問題を取り上げた上記の2記事。
これに、もう一つ、昨年11月20日掲載の以下の日経記事も参考に加えて、以下整理し、考えてみることにしたい。
⇒ 終活支援は行政サービス、頼れる身内なき単身高齢者増え – 日本経済新聞 2024/11/20


※上記資料⇒社人研:日本の世帯数の将来推計(全国推計) (R6(2024)年推計)

はじめの「高齢者「身元保証」、トラブルが急増 単身向けに事務手続き代行 監督官庁なく信頼性課題」と題した記事を要約する。

頼れる家族がいない単身のお年寄りが増え、身元保証や死後事務の代行サービス利用が広がる。しかし、一方では契約内容や解約時の返金に関するトラブルも増えている。
冒頭の日経で取りあげた例では、民間「家族代行業者」と結んだ身元保証・死後事務手続き代行契約に100万円支払い。しかし、その後、実際のサービス利用時に追加費用が生じるとされた。当初の説明になかったことと解約を求めたが、返却されたのは半額程度。
そこで地域の消費生活センターに相談した、というもの。

身元保証ビジネスの根深い危うさ

こうした問題や事件の事例は、最近表面化したものではなく、もう10年近く前になるが、身元保証ビジネス事業を拡大した公益財団法人日本ライフ協会の違法行為と引き受けた法人の倒産事件が、当時大きな問題になった。
詳しい内容は、こちらで見て頂けます。
⇒ 「身元保証」ビジネスの影 ~公益財団法人日本ライフ協会の事件をとおして~ | 神戸六甲わかば司法書士事務所(神戸市東灘区)の知って得する法律豆知識

その後も、同様もしくは類似した事犯・問題が継続して起きており、マスコミで何度も取りあげられている。日経しかり。
⇒ 死後全額贈与の契約無効 身元保証の愛知のNPO敗訴 – 日本経済新聞 2021/1/29
⇒ おひとり高齢者の身元保証、サービス続々 トラブルも – 日本経済新聞 2023/11/30

増え続ける独居高齢者を主な顧客ターゲットとして、家族代行サービスが広がる。
病院・買い物の付き添い、介護保険サービス手続き、不動産等財産管理、死後の遺体引き取り・火葬・納骨、社会保険諸手続き、遺品整理等。高齢おひとりさまの介護・終活と死後の対応など、第三者に頼らざるを得ない課題が多種多様にある。
こうしたニーズに対応する家族代行サービスが絶対に必要になる。
これらを請負う事業者は、総務省によると、全国で少なくとも400社はあるという。
しかし問題は、家族代行サービスを監督する中央省庁はなく、その定義も、サービスの内容や範囲があいまいなこと。

こうした背景もあって、国民生活センターによると、一昨年2023年度に全国の消費生活センターに対してあった家族代行サービス関連相談件数は355件。2014年度の108件から10年足らずの間に3倍以上に増えた。
高額な利用費、契約不履行、解約時返金不履行などのトラブルが後を絶たず、そうした認識の広がりで、事業者名を挙げ、信頼できる事業者かどうかの相談も増えているという。

総務省の2023年公表実態調査では、利用者の考えに反して財産を事業者に遺贈する遺言書が作られるなど、利用者の財産を巡るトラブルも複数確認され、法令違反が疑われる事例もあった。
その調査132事業者のうち、重要事項説明書の作成を確認できた事業者は2割にとどまる。返金ルールがない、利用者からの預託金を事業者側が個人口座で保管するなどの例も。

例えば、認知機能が低下した人に対しては成年後見人などの制度が用意されている一方、家族のいない健康な高齢者は頼れる公的なサービスが少ない。高齢社会の進展で身の回りの問題を一人で解決しないといけないお年寄りは自ずと増加する。厳しい状況を背景に、支援を模索しつつ、安心して利用できるよう自治体がサービスを提供する動きも増えつつある。
他の終活一般の自治体支援事業も含め、以下、その例を簡単に紹介したい。
詳しい内容は、参考リンクを貼っておきましたので、確認ください。

1)静岡市:2024年1月から事業者の認証制度を導入
・”契約締結時に第三者が立ち会う” ”遺贈を受けない” ”いつでも中途解約を認める” などの市規定の要件を満たせば、「優良」事業者として市のホームページで公表。
※参考リンク静岡市終活支援優良事業者認証事業:静岡市公式ホームページ

2)枚方市(大阪府):2024年10月、一定の条件の単身高齢者対象の死後事務サービス開始
・市民税非課税で預貯金500万円以下単身高齢者を条件で、市が委託した市社会福祉協議会が入退院時付き添いや入院費精算などを担う。
※参考リンク:・持続可能な権利擁護支援モデル事業の取り組みについて
枚方社協緑ディング事業【チラシ】.pdf

3)千葉市:あんしんケアセンター(地域包括支援センター)を軸にした高齢者対応サービスを提供。市が主に担当する介護・保健・医療以外のことは民間提携企業につなぐ。
・イオンライフ(イオングループ)はコールセンターで終活に関する市民の相談に24時間対応
・ヤックスケアサービスと博全社は身元保証や死後事務等を担当
・ソニー生命は相続や資産運用に対応
※参考リンク千葉市:エンディングサポート(終活支援)事業

4)岡崎市:2024年7月から終活応援事業として支援を強化
・利用希望の市民は登録申請書兼同意書を提出。死後、市が契約締結事業者へ連絡。死後事務に関する契約の履行を確認する。
同事業の特徴は、協定締結の12金融機関からの事業者紹介により、経営面の信用を担保していること。現在は5事業者(グループ)と提携しているという。
岡崎市は、私たち後期高齢者夫婦が住む街。見直しました。万一必要になれば世話になるかもしれないです。
※参考リンク終活応援事業 060808パンフレット案、 終活を支援しています。 | 岡崎市ホームページ

以上のような、自治体主体の高齢者支援サービス事業の広がりは、厚生労働省の自治体支援にも拠る。
同省は昨年2024年度から身寄りのない高齢者の日常生活や死後事務などを支援する自治体の費用を一部補助するモデル事業を始めた。昨年11月時点で実施あるいは実施予定なのは大阪府枚方市を含めて計6自治体に上る。
先述の枚方市の例がそれを示している。

また、先述にもあった契約者が認知症や死亡により支払い不能になった際に埋葬や相続手続きなどの費用に充当するための事業者への預託金が、経営破綻を理由に返金されない例などの契約トラブル。
同省は同年6月、こうした事業者への預託金の適正な管理などに関して「終身サポート事業者ガイドライン」を定め、10自治体が参加するモデル事業も開始している。但し、前述のようにこれに先駆けて取り組んでいる自治体もある。
加えて、同年9月には高齢化対策の中長期指針となる「高齢社会対策大綱」の改定において、身寄りのない高齢者の支援を明記。事業者の認定制度の創設も検討する。

課題先進国とひと頃よく例えられたが、改善・解決後進国だった日本。
超高齢化社会や超少子化社会への有効な対策が、打ち出され、成果・効果を生みだすことは、言うほど簡単ではない。
しかし、高齢化社会については、単身高齢者が、全国津々浦々で現実に、自身の家族関係や日々暮らす地域において増えている現実は厳然たるもの。
自治体にとっては、最優先課題の一つであり、取り組まないと困るのは、むろん当人と関係者。しかし、それ以上に困るのは、対処となる高齢住民が多い、当事者である自治体だろう。 
そして早くそうした事業を安定的に、適切に運営できる自治体となれば、住民の安心度・信頼度が高まり、続く世代の支持も高まるのでは、と思う。

もちろん、どの自治体もその体制やシステムを構築し、提供できるわけではないことも理解できる。
人口減少が著しい地域や、住民の居住地区が分散し、行政効率が著しく低い地域。
その他の課題も含め、多くは地方財政問題と担当する人材不足問題が大きな、高い壁となっている。
こうした潜在的かつ関連する問題を自力で改善・解決することは困難であり、国政レベルでの議論と対策・政策が不可欠である。
そのための高齢者への財政支出が増えれば増えるほど、若い世代、次世代への支出と比較され、問題視されるのが、このところの傾向である。
しかし、そうした比較論で、判断すべき課題ではないのは明らかで、高齢者支援制度の安定化は、現世代の将来の安心に繋がるものである。
むろん、ほとんどすべての高齢者が、いずれ単身高齢者となるわけである。その備えを自ら可能な限り行っておくべきことは明らかで、この数年で後期高齢者となった団塊世代には、是非、今から取り組んでもらいたいものだ。(私もです。)

『老後ひとり難民』『終活の落とし穴』も参考に

先述の日経記事の一つのなかで、こうした問題に詳しい日本総合研究所シニアスペシャリストの沢村香苗氏の以下の言葉を用いて結んでいる。
「家族、親族だけが担うことは難しくなっている。それを放置すればやがて自治体が担うことになる。民間との連携などで終活支援の仕組みを構築する必要がある」と。
この沢村香苗氏の著書に『老後ひとり難民』 (幻冬舎新書:2024/7/30刊)がある。
また読み終えたばかりの新書が『終活の落とし穴』(日経プレミアシリーズ:2025/1/9刊)。
この2冊を参考にした、高齢おひとりさまをめぐる課題について、今後取り上げていく予定です。

※お薦め新書:『老後ひとり難民』はこちらから ⇒ https://amzn.to/4hCpTRW
      :『終活の落とし穴』はこちらから ⇒ https://amzn.to/42J1NjR


関連記事